scroll

Project Story プロジェクトストーリー

マイナーチェンジモデル開発プロジェクト
シャシ部門開発チーム
Minor Change Model Development Project

2016年2月、ある機種のマイナーチェンジモデル開発プロジェクトが立ち上がりました。その中でシャシ(サスペンション、ステアリング、タイヤ、ホイールなど、おもに足回り関連の構成部品)部門の開発に臨んだメンバーの当時のエピソードなど、リアルな声を交えて紹介します。

Concept

NEW STYLE WAGON

Members

シャシ部門
プロジェクトリーダー

設計
(シャシ開発ブロック)

U.S. 2004年入社

 
ボディ・外装領域担当

設計
(ボディ開発ブロック)

H.T. 2003年入社

 
冷却ダクト域担当

設計
(PU開発ブロック)

M.Y. 2007年入社

 
ホイール担当

設計
(シャシ開発ブロック)

N.T. 2015年入社

※所属部署は、取材当時のものです。

よりスポーティで上質な走りを
総力を結集して挑むプロジェクトが始動

ホンダテクノフォートの四輪車開発には2つの形態がある。1つは各部署がそれぞれの専門領域の仕事を受託する「機能開発」。これまでは機能開発を中心に事業のノウハウを積み重ねてきた。
もう1つが「機種開発」。クルマ1台のほぼすべての開発領域を会社として受託するもので、専門領域を横断して会社全体での取り組みとなる。

開発コンセプトは
「NEW STYLE WAGON」

最初に各部門からプロジェクトリーダーが決められ、開発チームが発足。そして今回のプロジェクトに対し、「NEW STYLE WAGON」という開発コンセプトが掲げられた。
「コンセプトに合わせて、どの部分をどのように改良していくかを決めるのがリーダーの仕事です」。そう話すのはシャシ部門のプロジェクトリーダーを務めたU。シャシは、車両の足まわりの開発を担当する部門。運動性能や乗り心地など、目には見えないものの、車の性能や安全の根幹となる領域である。Uはチーム内で開発の方向性を統一するために「よりスポーティで上質な走りへと進化」というキーワードを打ち出した。

「上質な走り」を
実現するための2つのこだわり

■ 乗り心地の良さを叶えるチューニング

「クルマの運動性能に関わるシャシのセッティングに苦労した」と振り返るU。低全高が支持を集めるこのモデルだが、さらなるスポーティな感覚を実現するためこだわったのは、車高と安定した走行性能や乗り心地に影響を与えるサスペンションのセッティングだった。ポイントは、スプリングとダンパーの減衰力とのバランス。設計・研究部門と手を取り合い、納得のいくセッティングを実現するため、試作と検証の試行錯誤は開発期限ギリギリまで続いた。

■ 新色ブラッククリアで魅せるホイール

そのころホイールの設計を担当したNは、ホイールの大型化に伴う乗り心地とデザイン変更の2つの課題に直面していた。
一般的にホイールが大きくなると、乗り心地が低下するため、従来モデルの乗り心地を維持するためには、自分の担当部品だけでなく、サスペンション周りの様々な部品の形状や特性を変更する必要があった。だが、各部品はそれぞれ求められる性能を満たすための条件をクリアしているものも多く、設計を変更してもらうことは容易ではない。しかし、各担当者の理解を得るために粘り強く説明を繰り返した結果、それぞれの協力を得ることができ、理想とする乗り心地を実現することができた。

また、ホイールの大型化に合わせて、この車種では採用したことがない「ブラッククリア」の塗装とすることを決定した。角度によって変化する色の深さが魅力であるホイール色は、Uが打ち出した「上質な走り」を視覚化するために譲れない要素の一つと考えていた。
しかし、発色の難しさと開発期間の短さからホイールメーカーの担当者は、開発に後ろ向きだった。そこでメーカー担当者と交渉を重ね、必要性を訴えて説得した結果、熱意が通じて開発への協力を得ることができた。その後も、ホイールメーカーとは、ノウハウを共有しながら、助け合うことで、2つの課題をクリアした。

完成車両を前にして、”上質な走りへの進化“が具現化したことを確認し、「ホイールへの妥協なき追求」は間違いではなかったと感じた。

良いところを活かし、
「ここが良ければ」を実現する
マイナーチェンジモデル開発のむずかしさ

■ 目指すクオリティのためには絶対に妥協できない

ボディ・外装領域を担当したHは、車両完成後に発生した問題に苦労していた。オーディオの音量を大きくすると、スピーカーの振動がドアの接合部と共鳴し、ノイズを発生させてしまうのだ。対策に取りかかったHは「寸法精度は正確か」「部品の取り付けは適切か」「部品自体に不具合はないか」など想定しうるあらゆるケースを検証し、図面と照らし合わせながら一つひとつチェックを始めた。「目指すクオリティのためには絶対に妥協できない」。その信念を胸に、作業着を真っ黒にしながら車体に耳を近づけて音の原因を探り約1カ月。ようやく原因を特定した時は、大きな安堵感に包まれたと話す。

■ 機能はもちろん、ドライバーの心理も想定し快適を届ける

クルマの心臓部であるパワープラント領域では、ハイブリット車用バッテリーの冷却ダクトを設計したMも課題に直面していた。今回のマイナーチェンジでは、搭載スペースは従来のまま燃料電池の容量が拡大することが決まっていた。いかに効率良く、静かに冷却できるかが課題だった。バッテリー搭載場所は運転席の横で、乗員の耳にも近い。ハイブリット車は特に静かであることがセールスポイントなだけに「アクセルを踏み込んだ時の大きな音はユーザーに不快感を与えかねない。冷却に必要なだけの風量を維持することはもちろん、従来同様の静粛性を維持することにも苦労した」と振り返る。
Mが行ったのはガイド形状(風の流路)の構築。研究チームとともに複数パターンの形状を試作し、ユニット単体での試験と実車での試験を繰り返し、解決へと導いた。

ホンダテクノフォートで機種開発を行う意義
未来へもたらすもの

■ リーダーを経験して、目線が変わった

今回の機種開発によってホンダテクノフォート開発メンバーにはそれぞれの物語と成長があった。
シャシ部門のリーダーを務めたUは、前回の機種開発ではブレーキ設計の主担当を務めていた。今回は各領域の主担当たちを取りまとめるリーダーという立場で「よりユーザー目線を意識するようになった」と自身の成長を実感する。こだわりぬいた低全高やホイールのブラッククリア化もそのひとつ。「どうすればユーザーに喜ばれるか、どうすれば選んでもらえるか」といった、今までとは違う「ユーザー目線の商品性」を意識した他部門との調整業務は、仕事のやりがいを再認識させてくる貴重な経験となった。

■ エンジニアの成長がホンダテクノフォートの未来をつくる

Uとともに、前回の機種開発から外装に携わってきたHも、今回初めてドアやテールゲートなどの新たなパーツにチャレンジした一人。初めは戸惑いもあったが「前回の経験が生きてスムーズに取り組めた」と手応えを感じている。今回マイナーチェンジモデルの機種開発プロジェクトに初めて参加したMとNも、それぞれ課題に直面したことで「最後までやりきる力」が着実に身に付く日々となった。部門を越えた協力関係ができたこともあり、「社内には多くの相談できる仲間がいる」と実感したことも、今後の自信につながったと話す。
各領域にエキスパートのエンジニアがいること。そして、それぞれが協力して助け合い、同じ目標に向かって行動できることが会社の強みだ。機種開発という新たな領域を確立しつつあるホンダテクノフォートは、さらなる高みを目指していく。